農地の時効取得は可能か?

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農地の時効取得は可能か?

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時効イメージ

取得時効とは

まず「取得時効」のおさらいをしますと、不動産には、本来自分の所有のものでなくても一定期間占有を継続し時効を援用すれば自分の所有になる制度です。
もう少し法律的に申し上げますと、他人の土地があったとして、これを平穏かつ公然と所有の意思をもってその土地を占有し、真の所有者から権利の主張がなく、10年ないし20年経過すれば、その土地が自分のものになるという制度です。
時効取得可能な期間には10年と20年の二種類あり、10年の場合は、占有者が「善意無過失」、20年の場合は占有者が「悪意」または「善意有過失(少なくとも過失がある)」という要件があります。

農地の場合

では農地の場合は時効取得が可能かという本題に入ります。
多くの方がご承知のとおり、農地法という法律によって農地を売買したり賃貸するのは許可が要ります。
しかし、農業委員会の許可不要で農地を取得する方法の一つに時効取得という方法があります。
時効取得によって所有権移転する場合、農業委員会の許可が要らないという例外になっています。

法務局および農業委員会の対応

農地法第3条の規定が適用されない、時効取得を原因とした所有権移転登記が申請された場合の法務局の対応としては、農業委員会に照会し回答をもらいます。
農業委員会は取得時効が完成しているかどうか、調査して回答します。
その結果、農業委員会が「許可が必要」と判断すれば、登記官は登記申請を却下します。
そして、時効を偽装したことが判明した場合は、登記申請の取り下げを指導する。
それにも応じない場合は、農業委員会が都道府県に連絡し、都道府県は是正勧告を行います。
それにも応じない場合、都道府県は警察に告発します。
有罪になれば、3年以下の懲役になるか、または300万円以下の罰金が課されます。

農地の場合の時効期間

占有者が悪意有過失の場合、つまり他人の農地を勝手に20年間耕して使っているという状態を続ければ自分のものになります。
または、占有開始時に他人の農地であることについて善意無過失、裏を返せば自分のものと思い込んでしまい、途中で間違いだと気づいても、10年間所有の意思をもって占有を継続すれば自分のものになります。
しかしながら、10年の時効が認められることは極めてまれです。
なぜなら無過失を証明することは非常に難しいからです。
無過失であることは「推定する」だけでは足りず、無過失であることの具体的な証明が必要になります。
さらに農地は、農地法の許可をもらっていない場合、無過失であったとはいえない判例があります。
農地の売買や賃貸を行うときは、許可が必要であることは知っていて当然で占有者が「善意無過失」ということはあり得ないというわけです。
従って、10年の「善意無過失」は充たされないので20年の占有期間を要します。

リスクヘッジ

一方、「勝手に」や「思い込んでしまった」ではなく、所有者と耕作者がお互いの合意のもとに売買契約を交わし、売買代金を支払うことによって、所有の意思をもった占有にあたるという判例が有り、時効取得に必要な自主占有が開始されたと理解されています。
何らかの手違いや理由により、農業委員会の許可をもらわずに売買してしまったまま20年経過すると、やはり時効取得が可能です。
この場合にに気をつけることは20年間の農地の固定資産税に関してです。
あくまで固定資産税を課税されるのは登記名義人になりますので、農地を使っている人、占有している人が何らかの形でお金を登記名義人に支払うということが必要です。
但し、この話は必ずできるというわけではありません。
また、次のようなリスクがあるということも併せて考えていただければと思います。
もし、合意のもとに20年間使っているという状態があったとして、もし、所有者がお亡くなりになって相続が起きた場合に、その子供たち、あるいは配偶者の方が、そういう話を所有者である親や夫から聞いていたかどうかという問題があります。
例えば、相続した方が聞いて入れば問題ありませんが、聞いていない場合は所有権移転の登記に応じてもらえないこともあるわけです。
それでも裁判で登記手続きを命ずる判決を得て判決書を登記申請に添付すれば単独で時効取得による所有権移転登記が可能です。
その場合は、20年間継続して耕作していたという証拠(所有者に固定資産税相当額を支払っていたという証拠)をもって所有権移転登記請求訴訟を提起する必要もあります。
所有権移転登記を命じた判決が出れば、その判決をもって、不動産を取得した方は単独で登記申請をすることができます。
あらかじめ所有者と耕作者が、売買契約に加えて占有開始時に仮登記を設定するという方法もありますが、万全ではありません。
なぜなら、仮登記は10年で時効が消滅してしまいますので、所有者が、10年経過したときに消滅時効を「援用」してしまうと、仮登記の効力がなくなり、占有者は仮登記の抹消を請求されてしまうからです。

賃借権の時効取得

農地を賃貸借する場合はどうでしょうか。
農地の賃借は借りている人が自分のものであるという認識がないため、本来は時効取得ができませんが、判例では賃料を支払うことによって「自己のためにする賃借の意思」「不動産を使用収益する意思」があったとされ、10年間の時効取得を認めており、賃借権を時効取得できる可能性がないわけではありません。
地主の立場からすれば賃貸期間が10年をこえない時期に農地を返還してもらう必要があります。

以上のように理論的には農地の時効取得もかのうと思われますが、そもそも農業委員会の許可を得ずに農地を売買したり、賃貸借したりするのは脱法行為です。
最悪の場合は前述したように刑罰が科される場合もありますので、リスクを承知し、十分注意することが必要です。

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