住宅ローンや不動産担保ローンの返済に行き詰まり、担保にした一戸建てや土地を任意売買しようと考えた時に、少しでも費用を浮かすために個人でおこなうことができないか?と思う方もいることでしょう。費用を浮かせば、浮かせた費用分、ローン残額の分割返済が楽になるからです。
しかし、個人でおこなうのはかなり難しいと言えます。なぜ個人でおこなうことが難しいのかを、本記事で解説していきます。
任意売買は個人でおこなうことは難しい
結論から申し上げますと、任意売買を個人でおこなうことは難しく、任意売買が得意な不動産会社などに依頼することが一般的です。なぜ個人がおこなうことが難しいかというと、次のような折衝などを金融機関や市町村とおこなう必要があるためです。
- 任意売買はいつでもできるわけではなくタイミングを図る必要があること
- 債権者の順位確定や配当金確定、無配当先への配慮しなければならない
- 自治体への差押も考慮しなければならない
このような項目を個人ですべておこなうのには限界があります。
なお、この内容は通常の不動産会社でもできないような高度な業務に該当するため、依頼する場合でも任意売買を得意としている会社に依頼をしなければなりません。大手の会社だからといって相談をするとトラブルになる可能性があります。
金融機関は代位弁済後でないと任意売買には応じない
個人で任意売買をおこなうのが難しい理由の1つ目は「金融機関が任意売買に応じるタイミングがある」ことです。
金融機関はいつでも任意売買の手続きを、受け付けてくれるわけではありません。金融機関は債務者より住宅ローン返済が滞ったときには、保証会社という会社から滞ったローンの残額分を受け取ります。このような金銭の流れがあり、金融機関は急いで任意売買をするメリットがないため、すぐには受け付けてくれないのです。
受け付けてくれるのは、保証会社から保証金を受け取った後、つまり代位弁済後か、サービサー(債権回収会社)に債権回収の権利を移譲した後になります。この代位弁済などがおこなわれるのは、一般的にローンを滞納し始めてから3ヶ月~6ヶ月経過したくらいと言われています。
しかし、債務者からすればただでさえお金がないわけなので、すぐにでも任意売買を始めて欲しいと思うはずです。その場合は、任意売買が得意な不動産会社に早めてもらうよう、金融機関に折衝してもらいましょう。ただし、そのリスクはその会社から聞き、リスクを把握しておく必要があります。
債権者の順位確定や売却金額の配分を決める
個人で任意売買をおこなうのが難しい理由の2つ目は「債権者の順位確定や売却金額の配分を決めなければならない」ことです。
抵当権が何本も担保物件についている場合は、抵当権を付けたすべての金融機関との打ち合わせが必要です。
通常、抵当権を付けた順番で一戸建てや土地の売却金額が配当されていきます。順番で配当した場合、後順位の金融機関(抵当権者)は配当を受けることができなくなるときがあります。
例えば、売却金額2,000万円、第1順位抵当権1,500万円、第2順位抵当権1,000万円、第3順位抵当権500万円の場合は、第1順位に1,500万円配当され、第2順位に500万円配当され、第3順位は配当なしとなります。
このような場合は、第3順位抵当権者が売却を阻止してくる動きをする可能性があるため、第1順位~第3順位までを納得させる金額配分を決めて折衝する必要があります。
自治体の差押にも対応しなければならない
個人で任意売買をおこなうのが難しい理由の3つ目は「自治体の差押も解除してもらわないといけない」ことです。
前述の抵当権者の配分だけではなく、固定資産税を滞納し差押されている場合は差押解除のため、市町村(23区内は都、以下「自治体」)と打ち合わせをおこなわなければなりません。
自治体によっては、固定資産税を滞納分を全額納付しないと差押を解除してくれないところ、一部納付で差押を解除してくれるところがあります。このような違いも把握しつつ自治体と抵当権者とも配当金を決めていかなければなりません。
配当金次第では、任意売買をおこなえなくなったり、余計な金銭まで金融機関や自治体に渡しローン残額分割金額が大きくなってしまったりします。このようなことを避けるためには、任意売買に深い知見を持った不動産会社などの専門家に依頼をします。
まとめ
任意売買は個人でおこなうことはほぼなく「任意売買が得意な」専門家に依頼するのが基本です。なぜなら売却をするにあたって金融機関や自治体とお金の配分を決めないといけないからです。
折衝相手は、お金を貸すプロであり、お金を回収するプロです。そのプロを相手に折衝をするのは専門家でなければ太刀打ちできません。
任意売買を検討している方は、いち早く専門家に依頼し、少しでも早くローン残額分割額を支払うようにし、生活を安定させていくことを考えることが重要です。