共有不動産を売却するには、民法の規定に則って売却する必要があります。
民法では共有物物件全部の売却をおこなうには、共有者全員の同意(売買契約書には全員の署名捺印が必要)が必要としています。
しかし、自分の共有持分だけを売却する場合には、他の共有者の同意は必要ありません。
そのため、共有物件の維持管理が大変なときには、持分だけ売却してしまうことが可能です。
本記事では、持分を売却する方法、売却するときの注意点などを紹介します。
共有物件とは
共有物件とは、共有者がいる不動産のことをいいます。
共有者が2人でも、10人でも共有物件です。
共有物件を処分したり、維持管理する場合、おこなう行為によって共有者の同意が必要となってきます。
また、共有物に対しておこなう行為により、何人の同意が必要なのかが変わってきます。
どのような行為にどのくらいの人数の同意が必要なのか、表にまとめました。
行為の種類 | 同意が必要な共有者の人数 |
変更(処分)行為 | 共有者全員の合意が必要 |
管理行為 | 共有者の持分数字の過半数が必要 |
保存行為 | 各共有者が単独で行使できる |
変更(処分)行為に該当するのは、共有物件全体(持ち分は別)の売却、建物の大規模修繕、増築などです。
管理行為に該当するのは、賃貸借契約締結・解除、賃料減額などです。
保存行為に該当するのは、簡単な修繕行為、法定相続などによる所有権移転登記などです。
共有持分で起きやすいトラブル
共有物件の共有持分を保有しているとさまざまなトラブルに巻き込まれることがあります。
ここからは、持分を保有しているときに起きやすいトラブルを紹介していきます。
離婚した後、共有物件の維持管理が難しくなってしまった
前述の通り、共有物件を維持管理するには共有者の同意が必要になる場合があります。
夫婦で2分の1ずつの不動産を共有している場合、離婚後、配偶者と連絡がつかなくなるだけで過半数以上の同意が必要な行為を一切おこなえないことになってしまいます。
そのため、離婚時には共有持分をどちらかが売り渡すなどの対策をしておくと良いでしょう。
相続が進み共有者が多くなってしまった
不動産を長期で保有していると相続が発生し、共有者の数が時間経過とともに増えていってしまいます。
共有物件は共有者が多くなれば多くなるほど、同意必要数が増え、面識のない人間が多くなります。
あまりに共有者が多くなってしまうと、共有物件の維持管理は基本的におこなうことができなくなります。
相続を防止するということはできないため、共有者同士で共有物件の維持管理の難しさを打ち合わせしておき、物件を早期に処分してしまうのが良いでしょう。
持分を勝手に売却してしまった人がおり売却先から共有物分割請求が来た
維持管理をしっかり話し合っておかないと、維持管理に不満を持ち、勝手に自分の共有持分を売却してしまう人が出てきます。
不動産会社に共有者が持分を売却すると、持分を買い取った不動産会社は、持分の整理のため共有物分割請求訴訟をおこしてくる場合があります。
共有物分割請求訴訟とは、共有物分割の方法のうち、裁判所を通して共有状態の解消を行う訴訟です。
つまり、裁判所の判断で不動産会社の持分を買い取ったり、不動産会社へ持分を売却したりして共有状態を解消しなければならなくなるわけです。
共有状態の解消方法
持分を解消するにはいくつかの方法があります。
ここからは共有状態を解消する方法を紹介していきます。
共有持分を売却してしまう
持分を売却するときには他の共有者の同意が必要ないため、持分を売却して共有状態を解消します。
持分だけ売却するときには、売却価格が安くなること、持分を勝手に売却することはできるが他の共有者に売却することを伝えておく必要があることには気を付けておきましょう。
まず、共有持分を購入してくれるのは不動産買取会社くらいです。
一般個人の方が持分を購入しても利用価値がないためです。
そのため、買取になるため売却価格はなかり低くなることを覚悟する必要があります。
また、持分は自分の意思だけで売却することができますが、売却した後におこなう登記については他の共有者の協力が必要になります。
勝手に売却すると共有者の登記の協力が得られなくなる恐れが出てきてしまいます。
そのため、持分を売却するときには、あらかじめ他の共有者に通知しておきましょう。
共有持分を他の共有者に買い取ってもらう
持分を他の共有者に買い取ってもらえないか、事前に相談することも大切です。
共有者にとって他の人の持分を購入することにはメリットがあるため、良い値段で持分を購入してくれる場合があります。
持分を多く保有するほどその人の議決権が多くなるため、共有物件をどのように維持管理していくかが決めやすくなります。
土地の場合は持分で分筆し、分筆後の土地は単独名義にしてしまう
大きな土地を共有している場合には、土地を分筆して分筆した土地をそれぞれの共有者が単独名義で所有するという方法があります。
それぞれの土地は同じような間口や面積にしないと揉めやすいため、どのような土地の形に分筆するのかなどをあらかじめ共有者間で話し合っておきましょう。
共有持分を売却するときの注意点
持分を売却するときには、次のようなことに注意しなければなりません。
- 不動産会社に持分を買い取ってもらうことはできるが、内緒で持分売却してしまうと他の共有者に迷惑を掛けるケースがある
- 不動産会社に持分を買い取ってもらう場合、価格がかなり安くなる可能性がある
持分を買い取った不動産会社は他の持分を買い取るか、自分が買い取った持分を他の共有者に売却しようと働きかけます。
この働きかけが上手くいかないと、前述した共有物分割請求訴訟を起こす可能性があります。
このようなことがあることを、共有者全員が知っておかないと共有者同士の関係性が悪化してしまいます。
また、持分の買取はかなり安く買い取りされるおそれもあるため、買取価格が適正相場なのかも確認する必要があります。
まとめ
共有物件とは共有者がいる不動産のことで、民法の共有物に則った活用方法をしなければなりません。
そのため、1人で共有物件を売却したり、貸したりすることができないということです。
持分は単独で処分することは可能ですが、処分をするときには慎重におこなわないと他の共有者に迷惑がかかります。
共有持分の売買はトラブルが起きやすい特殊な売買であるため、一般の不動産仲介会社では取り扱いが難しく不動産仲介会社としても売りにくいのが実情です。
そのため、共有持分専門の買い取り業者に依頼することが、共有持分の問題を早く解決することとなります。